RubyWorld Conference 2010出席メモ

松江という僻地にもかかわらず「RubyWorld Conference2010」に急遽出席。制服スーツ組が8割を占めていたが、セッションなのに質問が飛び出さない雰囲気。TCP的というよりUDP的。彼らがどういう理解度で、どういう風に聞いていたのかサッパリわからなかったが三木谷効果も相まってかなりの人数が来場していた。

セッションのメモを下記に。

■オープニングセレモニー
 溝口善兵衛 島根県知事
  島根県の県立学生を集めて研修や合宿。島根の行政システム利用支援。
  ソフトウェアビジネスの企業誘致、助成金。クライアント企業の飛行機利用助成。
  サンノゼのように自然豊かな松江がソフトウェア産業のメッカとなるように期待。

 松浦正敬 松江市
  駅前オープンソースラボ紹介。行政システム刷新にできるだけRubyを使うように。
  原発あるので電力半額、松江は住みやすい。松江市東出雲町と合併。
  農機さかんな東出雲町関係にIT導入などが見込める。

■記念講演
 富田健介/経産省 商務情報政策局 審議官
 『新産業創出と社会システム構造改革等に向けた新たなIT戦略について』
  政権交代による成長戦略の転換。環境維持医療分野。それを支えるIT。
  IT市場は米英に続き日本は世界第三位。
  海外有力プレーヤーはインタフェースのみOPENにしてコアはブラックボックス
  日本はすり合わせ型の強みがだがモジュール単位がオープンになると駆逐される。
  日本は労働生産性が低い。IT投資が不足している。オランダは農産にITを付加して1.5次産業化。
  日本は品質の高い社会インフラを活用すべき。
  Rubyの国際標準化を目指してIPAなどが支援している。
  世界でRubyが活用されるように支援していきたい。

■基調講演
 まつもとゆきひろ『持続可能なRuby
   Ruby歴史振返り。1人から始めたRubyは2013年にはRubyUser400万人推計。
   米でプログラム言語人気調査(TIOBE INDEX)09年10位・10年12位。
   Railsバブルではなく、Rubyが定着していることに満足している。
   持続可能にする要素
    1)Railsを支えたRubyの実益・生産性・柔軟性
    2) 可能性のある技術(Rails)は他の技術に新しい技術を生み優れた技術者を集める
    3)情熱。保守から冒険。中小を中心にした産業構造の変革。


■セッション

 相澤歩/アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズ株式会社
 『Rubyによるシステム開発・運用支援活用の事例』
 
  グルー言語としての利用/DBスキーママイグレーション管理/統合デプロイ について。
  仕様変更多め損保バックエンド連携。
  メインDBとローカル開発DBのスキーマ差分をActiveRecord::Migration+SVNを使ってスキーマ統一管理。
  生保には数理システムがバックエンドにあり数理屋がテストデータを細かく検証する。
  データはメインフレーム上で動作するが確認はEXCEL上で行う。
  EXCELEBCDICデータのコンバートをRubyで。
  情セキュ警告対策にExerbでexe化配布/JRuby jar配布。
  クラウドデプロイ。開発環境からクラウド本番へデプロイ。
  膨大な組み合わせのテスト環境および本番環境の更新にcapistrano
  サーバー依存のshを動的生成してcapistranoでリモート実行。
  全自動ではなく、効果のある部分に集中して半自動に絞るところが肝要である。
  自分の理解できる範囲で機能を使う。ひとつの方法に固執しない。
  ツールを調べる時間をPMが与える。
  日々の鍛錬に睡眠薬代わりにGitHubを眺める。


 角谷信太郎/株式会社永和システムマネジメント
 『ふつうのシステム開発~Rubyを活用した受託開発をアジャイルにするためのパターンの紹介』
 
  Java2Rubyで多人数分散から少人数集中の構成で密な仕事。
  再委託なしで完結。投資効果ある維持変更可能なシステム。
  小さなチームで作ることは幸せである。
  経験はスケールするがチームの人数が増えるとスケールしない。
  Featureからリリース計画する。
  タイムボックス(ある階層時間単位)にfeatureReleaseを当てはめる。
  頻繁なイテレーションでチーム意思の同期を取る。
  具現化するときには設計テスト実装を一体化する。
  テストを書くのにRubyは最適。


 片山智咲子/Ruby ビジネス・コモンズ
 『OSS Open Labを利用したRuby 研修用コンテンツ』
 
  RBCは福岡を拠点にしている。利用者と開発者両視点での研修プログラム。
  重要な研修のポイント:1日で完成、未知をなくす、Rubyの影響を考える。
  参加者の7割がRuby未経験。


 Stevie Clifton/Animoto Productions ※最後の5分だけ聴けた
 『How Ruby Enables Startup Success』
 
  最初の2、3年を乗り越え乗換えを検討するにあたりフレームワークや利用するアプリケーションを選びなおす。
  rack対応することがそれらを助ける。EC2で30万インスタンス(!!)。
  大量の仮想ノードでアーキテクチャを多種同時にテストすることでアーキテクチャのリファクタを行える。


 Daniel Bovensiepen/Siemens AG
 『Metros using Ruby

  シーメンス 中国地下鉄制御システム
  高品質を求められるシステム。
  遠方(China)で生産運用しているモジュール品質テストにRuby利用。
  RubyValidationプログラムをインターネットを介してChinaの基地局で実行しリコンフィギュア。
  高度に統合されたシステムではコンポーネント毎の小さな隠れた障害が起きるが分析が難しい。
  複合的に起きる障害を可視化するために、大量のログファイルを構文圧縮。
  Gnuplot/Graphvizなどで可視化、Excelのサマリ化を自動化しデータを分析者にportingする。


 武藤紀之/株式会社ティージー情報ネットワーク
 『Ruby を全面的に採用した東京ガス地震防災システムの紹介』

  東京ガス地震防災システム SUPREME。2009年リニューアル時にCからRuby中心にリプレース。
  地震発生時の危険地域を瞬時に判断してガス停止し二次災害を防ぐ。
  首都圏にある4000のセンサーを緊急回線用FOMAで定期的に地震加速度集約。
  ログデータとボーリングデータ、地形データを複合解析する。
  RubyDeamon[232個](100プロセス×100スレッド)でUDPにてデータ受信。
  管理システムWebクライアントはSilverrightC#でベクター描画
  Rubyは実装スピードと変更に強く、競札案件で低予算にて受注


 野田哲夫/ちゅうごく地域Rubyビジネスフォーラム/島根大学
 『中国地域におけるRubyビジネス活用の促進に向けて』

  2006年 RubyCity MATSUE Project 発足 Ruby地域資源(地域振興)に
  2009年 中国地域Rubyビジネス活用研究会発足
   Rubyによる業務システム、パッケージ、の開発を中小ベンダーが発表する場
   産官学支援
   Rubyビジネス活用・プログラム研修・認定試験対策
   優位性、利点の明確化、数値化
    Perl5年経験者相当=Ruby初製造と同等のパフォーマンス
    Ruby生産性はJavaの4.5倍
   自治体業務システムでの活用、需要創出
   コスト削減と大手ベンダーロックインの解除、地域情報産業活性化


 園田裕貴/ruby core team/Scaleout Inc.
 『Ruby 1.9.2 has been released!』

  2010/08リリース・Socket,Time,Random,K-taiEncoding,Fiddle,Psych
  IPv6透過的に、2038年問題、乱数生成などの問題解決
  RubySpec通ったのが最大の功績
  8ヶ月リリース遅延
  1.9.1に広がった仕様をなんとか収束、安定
  今後profiler,tracer,debugger,MVM,dtraceの対応が期待される