2010年に読んだ本74冊の中で最も影響を受けた10冊 #10book2010

なんか流行ってるみたいなので読書振り返り2010をやってみる。
本を読もうと思い立ち、6月の頭から市立図書館で本を借りて読書をしはじめた。

Chrome拡張「Libron」を使うとAmazon.co.jpの検索の延長で、図書館の予約まで行うことができる。via Amazonで本を購入するのを抑制して近くの図書館で借りて読むのに最適なChrome拡張「Libron」: 僕だけが幸せになればいいのに。

twitterやらAmazonやら、前々から読みたかったんだよねとウィッシュリストに積んでおいた本をこのメソッドで自分なりに借りまくって読み続けた2010年読書を振り返ってみたい。

2010readbooks

2010/06〜12の213日間で読んだ本の数:74(1日平均0.35)・読んだページ数:15,702(1日平均73)という結果になった。最初の勢いで自分なりにかなりのペースで読み進めたが後半は失速した。とはいえ今まで読書といえる位の本は読んでこなかったのでこのインプットは新境地であった。

その中でも2010年において

★★★(人に勧めたい)」[5冊]
★★☆(もう一度読みたい)」[6冊]
★☆☆(読んで損はない)」[13冊]

と評価した本のうち最も影響を受けた本10冊を感動順に挙げる。


1位:「自由をつくる自在に生きる」★★★

著者:森 博嗣(集英社新書)

2010年はこの本に救われたと言っても過言ではない。自由は獲得するものではなくて創りだす物だったらしい。理知的、オタクに向いている文体。日々不自由を感じているなら読むべき。

自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)自由をつくる自在に生きる (集英社新書 520C)
森 博嗣

集英社 2009-11-17
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素晴らしい本。森博嗣とはこんなに面白かったのか。抽象的ながらも花弁を一枚一枚分解していくような具体性を持って「自由」または「支配」を紐解いて解説していく様は見事である。文体、構成、発想が僕にとってバランスよく染みてきて大変よみやすく楽にさせてくれる本だった。何回も読みたい。
読了日:09月16日


2位:「凡人として生きるということ」★★★

著者:押井 守 (幻冬舎新書)

「自由をつくる自在に生きる」とあわせて読みたい。どちらも「支配」の本質を言い当て、自由へのヒントが書いてある。支柱になりうる本。

凡人として生きるということ (幻冬舎新書)凡人として生きるということ (幻冬舎新書)
押井 守

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押井守哲学本。非常に具体的なところから組み立てていくので理屈人間にとっては大変読みやすく、理解しやすい。デマゴギーに溢れているという洗脳の常套句から始まり、ほどよい中庸的な視点から物事を観るように勧める。オタク、コミュニケーション、セックス、勝負、自由、オヤジと若者。最後に格差。見事な構成ですんなり読める。即効で洗脳されるので気を張り過ぎてるときに読む本。

引用メモ:よろしい。確かに俺はふられた。だが、その結果はオレ自身の世間的な評価とは全く関係ない。反省すべき点はあったかもしれないが、それとて決定的な原因だったかどうかは明らかではない。ひょっとしたら相手の女の子さえ、どうしてオレではダメなのか説明できないかもしれない。クラスの女の子に「お茶しに行こう」とは言えなかったが「ベトナムについてどう思う?」と話しかける事はできた。要するに話す理由もテーマもないのに誰かと面と向かって過ごすのが苦痛だっただけだ。価値観を共有できない人間と一緒に過ごす時間には耐えられなかったのである。煉獄への道は善意で舗装されている 「かけっこでいつもビリの子は可哀想」 民族を均質化し優生思想を先鋭化させた組織、ナチス、クメールルージュ。ナチスは健康のためにと禁煙を奨励した。「格差論の根底にあるのは、人間の嫉妬である」ということだ。巷で盛んに議論されている格差への警鐘を通して透けて見えるのは根元的でプリミティブな妬みの心なのである。そして妬みほど強力な感情はない。KYの様に若者言葉を面白がって報道したり模倣したりしている場合ではないのである。ある現実を言い当てるときに表現に豊かな内実を持たせてそれを社会に再び転化する様な力を持つ「言葉」を生み出すことが本来、文化的な仕事なのだ
読了日:11月15日


3位:「少女素数 (1)(2)」/「HR ほーむ・るーむ(1)(2)」★★★

著者:長月 みそか (まんがタイムKRコミックス)

今年のマンガベストは長月みそか先生。「よつばと!」が霞む。それが長月みそかの「少女素数」との出会いであった。心が荒んでいる時に読むマンガ。スーパーファンタジーです。HRも基本の背骨は同じなので、あわせて読みたい

少女素数 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)少女素数 (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
長月 みそか

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少女素数 (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)少女素数 (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
長月 みそか

芳文社 2010-11-12
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素晴らしい。「おんなのこは妖精を宿している時季がある」「おんなのこはかわいい屋さん」完璧に完成したファンタジーよつばと!が霞んで汚く見えてくる。そのくらい最高。適当に「萌え」とか使うやつは死ねばいいのに。
読了日:06月05日

1巻に続き期待を裏切らない素晴らしい出来。喜怒哀楽編で中学生活にフォーカスした内容。恥ずかしがるということはとても大事なことなのだと気付かされる。
読了日:11月22日

HR ~ほーむ・るーむ~ (1) (まんがタイムKRコミックス)HR ~ほーむ・るーむ~ (1) (まんがタイムKRコミックス)
長月 みそか

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HR ~ほーむ・るーむ~ (2) (まんがタイムKRコミックス)HR ~ほーむ・るーむ~ (2) (まんがタイムKRコミックス)
長月 みそか

芳文社 2008-04-26
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少女素数でハマったので長月みそか作品読んでみた。無理やり4コマにした感じがあって読みにくいけど随所に可愛さが光ってる。登場する子たちは中学生と思えないほど冷静。気持ち読みすぎ。
読了日:09月12日

中学生生活後編。「あーもう」とかつぶやきながらゴロゴロして読む。ヴァーチャル中学生生活可能。男子のなんも考えてない感じがまたなんともいい。たった2巻で勉強じゃない部分の中学生活が脳内で出来る素晴らしい本。「少女素数」のベースプラットホーム。本当にホームルーム感。
読了日:11月30日


4位:「スピリチュアリズム」★★★

著者:苫米地 英人 (にんげん出版)

ライトで分かりやすくそして胡散臭い。だけど、江原某氏がテレビに出まくっているのに対して感じていた不安感を見事に言い当て、代弁している。自分探しの危うさを明文化した本。ヤラセ風味満載のテレビ番組にあきあきしたらこの本を読むべし。

スピリチュアリズムスピリチュアリズム
苫米地 英人

にんげん出版 2007-07-27
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江原、中沢新一dis本。「エッ」「マジで?」「それでそれで?」的な仕掛けが随所にあって楽しめる。スピリチュアルはご都合主義で最終的にはオウムのポア思想に行き着くという。表紙が金色なのは彼なりのギャグだろう。最後の科学者たるものの下りが熱くてよかった。思考停止も害悪だが自分探しはそれ以上に迷惑なのだな。
読了日:06月08日


5位:「野村ノート」★★☆

著者:野村 克也 (小学館)

野村克也があまり好きではないという人は是非読んでほしい。思いの外、彼には熱い血が通っている事が分かるだろう。

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野村 克也

小学館 2005-09
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素晴らしい。野村克也の野球観=人生訓が詰まっている。すべてに説得力があり、野球が好きでたまらない感じが伝わってくる。カッコつけることなく、実直に、ただただ野球が好きな偉大なる人物である。本当に野球が好きな者でないと野村の良さはわからないだろう。久々に感動した本。
読了日:06月13日


6位:「この世でいちばん大事な「カネ」の話」★★☆

著者:西原 理恵子 (よりみちパン!セ)

西原理恵子の荒い貧乏話。貧乏話ってひと昔前はよく聞いた気がするけど、自分の世代付近ではあまりきかなくなったきがする。立ち返って貧乏を考える機会をライトに得たいときに読む本。

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西原 理恵子

理論社 2008-12-11
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いつものサイバラギャグの本かと思いきや、超真面目な本。「ぼくんち」の解説本。そしてサイバラ本ではなく壮絶な西原理恵子の自叙伝。「ぼくんち」と併せて読みたい。
読了日:06月26日


7位:「赤めだか」★★☆

著者:立川 談春 (扶桑社)

この本なんで感動したか忘れたけど、なんか読み終わって満足感があったことだけは覚えている。イイ話がききたいときに読むとよい本…だった気がする。

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立川 談春

扶桑社 2008-04-11
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立川談志の本と言ってもいいだろう。落語の世界は格も厳しいものだとは想像出来なかった。一つ一つのエピソードが珠玉であり、落語を知らないものへ立川談志の凄さを物語る。噺家とは作家と言っても過言ではない。そう感じた本だった。
読了日:07月04日


8位:「父として考える」★★☆

著者:東 浩紀,宮台 真司 (生活人新書)

東 浩紀と宮台 真司というだけでお腹いっぱいな感じだが、異色の対談で取っ付き易い。父として気分転換したいときにこの本は最適だ。

父として考える (生活人新書)父として考える (生活人新書)
東 浩紀 宮台 真司

日本放送出版協会 2010-07-10
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面白かった。頭がよく難しい話になりがちな2人が「自分の子供」という自分にもわかりそうなモチーフで対談しているというのが「読める度」を高くしていて、読みやすくて内容が深かった。生まれか育ちか論には「学習する以前にダムが決壊する寸前のような「生来の蓄積」があると感じる」「子育てに関わり素直に驚いたのは、生まれた瞬間に実に様々なことが決定されている」と言っているように思っていた以上に2人とも「子供は生まれつきプリセットされている実感」は実際に本当に父親になって初めてわかるあるあるネタとして私でも共感できた。
読了日:08月29日


9位:「フロン―結婚生活・19の絶対法則」★☆☆

著者:岡田 斗司夫 (幻冬舎文庫)

岡田斗司夫社会学コンサルタントのような論調で一貫している。一瞬鼻につく物言いかもしれないが、冷静に社会変化をわかりやすく説明し、適応する解案を提示し、非常に具体性を持って発想の転換を迫る。それは時に残酷で、また、時代の趨勢を占っている。読んで損はない。

フロン―結婚生活・19の絶対法則 (幻冬舎文庫 お 26-1)フロン―結婚生活・19の絶対法則 (幻冬舎文庫 お 26-1)
岡田 斗司夫

幻冬舎 2007-02
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面白かった。結婚は社会契約であり、楽になれるという幻想。昔は社会的に成立していたが、世の中が豊かになった結果の「自分の気持ち至上主義」が台頭してきて成り立たなくなってきた。それに対応するにはどうすべきか。それが「夫をリストラせよ」であり、自身で実践している。よくやるよなあ。
読了日:07月17日


10位:「セブン‐イレブンの正体」★☆☆

著者:古川 琢也 (金曜日取材班)

セブンイレブンフランチャイズのからくりを知って世の中の厳しさを知る。頭の良い者とそれにダマされる者。その階層で世の中が成り立っている現実を見せつけられて心折れそうになる。一方で美談で語られる事柄というものは、ある一面なのであって裏の本質も併せて知っておきたい。そう強く思った一冊であった。

セブン‐イレブンの正体セブン‐イレブンの正体
古川 琢也 金曜日取材班

金曜日 2008-12
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オープンアカウント・ロスチャージ・ドミナントの3つを駆使しフランチャイズ店に自分の商品を過剰に買わせ自ら加盟店のライバルを増やし自分の利益は最大化する。流通の悪の権化のような存在、それがセブンイレブンであると結んでいる。システムや社員教育の随所に思想が徹底しており、流通の独裁を武器に高いレベルの商品を作らせ、過剰に買わせ、イレギュラーを握りつぶす。その完璧な不文律は見ていて美しい。流通と労使の方程式を編み出す鈴木会長の経歴がトーハン労組書記長、ヨーカ堂人事広報部長、7-11創業と文句のつけようがない美しさ。マーカーしたのは以下。セブンイレブン鈴木会長の経歴。中央大学学生自治会書記長、トーハン就職、組合書記長、ヨーカドー転職、人事広報部長、セブンイレブン創業、資本整理。労組、経営双方の視野を知り尽くし、711には労組を作らせないできた。711新入社員はいきなり肩書きが「管理職」で残業手当てなし。「新入社員みなし管理職」。広報いわく「店長手当てを支給しております(ニコニコ)」鈴木会長の指示には「ました!」と答えなければならない。「ました!」というのは「わかりました」の略語で業務を円滑化するためだという。鈴木会長にちなんだ著書が出版されると半強制的に購入させられたりする。ノリックを轢き殺したのはUターン禁止エリアでUターンした7-11のトラック。7-11配送トラックはGPSと車載端末で管理され100点満点で評価される。減点があった箇所を問いただされる。
読了日:07月18日


まとめ

2010年の読書は、とりあえず読書元年として自分を色々納得させるために「抗う」事だったように思う。読書においてはブランクがあるものだから、とにかく量を読もうと自分なりに時間を作って読んだ。新書を多く読んでみたものの、実際に琴線に触れたのは意外に古い本だったりした。74冊のエッセンスを使って結構色々な事に役にたったし、読書というものは是非続けていきたいと思った。

2011年も素晴らしい本に出会うことを願って。